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March 24, 2005

着うた参入妨害で5社に排除勧告 独禁法違反で公取委

 去年の8月に行われた立ち入り検査に対する判断が今頃になって公表されたという話。なんだか時間がかかってるなぁ…。
公取委によると、5社は、着うた配信サービスを始める際に必要なCD原盤権の使用許可を与える立場にあり、共同設立したレーベルモバイル(東京)に着うた配信サービスを委託する一方で、ほかの配信会社には使用許可を出さず、新規参入を妨害した。
 この件に関しては、立ち入り検査が行われた当時、オレなりに気になる問題点を指摘したのだけど、こういう結果になるということは、結局着うたは法律上で言うところの「レコード(録音物)」に該当しないという判断なんだろうなぁ。

 ちなみに、公取委のWebサイトには、正式な発表がPDFファイルで公開されている。公取委側の見解としては、着メロは自由に配信させているのに、なぜ着うたは同じようにならないのかということらしい。着メロはカバー演奏、それに対して着うたは原盤を使った製品だから、話は全然違うんだけど、そのあたりがゴチャゴチャになってる感じ。

 この勧告がそのまま通用してしまうと、日本のレコード会社にとって「音楽配信」は、これまで以上に美味しくない商売になりそうだ。どういうことかというと、着うた配信会社がレコード会社に音源供給をリクエストした場合、それをレコード会社はどんな場合でも一切断ることができなくなる。そして、一旦着うたで実例が出来てしまえば、次は着うたフル、さらには他の音楽配信に関しても同様な対応を要求されることになるのが見えているからだ。これをレコード会社が認めることはありえないだろう。

 一般的な話をすると、レコード会社は、アーティスト本人や事務所から原盤を借りているのであって、原盤印税を支払う代わりにその音源を独占的に頒布できる契約を交わしている(もちろん、レコード会社自身が原盤を持っているなどいくらでも例外はあるけど)。契約では全ての頒布形式(≒メディア)をカバーするのが普通で、今は存在しないけれど未来のある日に登場するであろう頒布形式にも対応した形となっている。例えば、10年前には音楽配信なんて無かったのだけれど、今じゃ当たり前だったりするから、そういうものも想定して含まれてますよという契約なのだ。(欧米の大物アーティストになると、契約書上でそういう条項を削除しているような場合もあって、PrinceなどはCDと音楽配信は別の条件で契約してるっぽい)

 そして、上記のような独占契約であるがゆえ、原盤を利用した製品をどのように頒布するかは、レコード会社側の裁量で行って良いことになる。つまり、レコード会社側にとって好ましくないような着うた配信会社へは音源提供を断っても、何ら問題はないということ。

 もし、着うたという頒布形式に関してのみ独占的にレコードを頒布できる権利を放棄しなければならないというのであれば、それはレコード会社の立場からしてみれば青天の霹靂、狂気の沙汰ということになる。もしかして、公取委はCDや他のパッケージ製品に関しても、独禁法の適用を考えているのだろうか? そこまでアナーキックなのであれば、それはそれでオモロイけどね(笑)。

 なんというか、「打倒巨悪、レコード会社は死すべし」(笑)的な考え方の人にとってみれば、レコード会社が思いっきり叩かれているだけに大喜びしそうな話ではあるのだけど、それはちょっと勘違い。レコード会社が独占的な原盤の利用と頒布の権利を主張する契約書をベースにしたビジネスモデルで成り立っていることについての是非を論じるのはまた別の話なのだ。ともかく今回の件に関しては公取委の方が絶対おかしいと思う。

 ※オレ自身は契約や法律のプロじゃないし、これまでに聞きかじった話をもとに、勝手気ままにこの事件を解釈してます。なので、ここに書いてある見方が正しいという保証は全然ないので悪しからず…。



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