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October 06, 2004

オリコンDDを真面目に考えてみる

 日経の記事を読んだ時点ではあまり深く考えなかったのだけど、今回の件をITmediaが記事で取り上げていて、そこからオリコンのニュースリリース(PDF)がリンクされているので、読んでみた。で、思ったことは、これは大変な事件なのかもしれないということ。

 オリコンは、ほぼ日本の音楽業界スタンダードと見なされるセールスチャートを作っている会社だ。そういう会社が音楽配信ビジネスを始めるということは、この状況をそのままアメリカに当てはめると、ビルボード(Billboard)が音楽配信ビジネスを始めるという話に例えられる。

 チャートという(建前上は)中立的な立場になければ意味をなさないデータを扱っている企業が、そのチャートの拠り所となるソフトの販売事業を始めるという事態は、考えようによってはかなり危ない状態になりそうな気がするのだけど、それはオレの杞憂なのだろうか?

 配信を行う「オリコン・デジタル・ディストリビューション(オリコンDD)」は、オリコンとは別会社ながら、出資は全額オリコン。つまり、両社間における相互の経営的な影響力は無視できない。しかも、実際にシステムが稼働すれば、オリコンDDでの売上がオリコンチャートに即反映するし、逆にオリコンチャートでの動きがオリコンDDでの売上に作用する。つまり、うがった見方をすれば、大いなる「出来レース」をチャートで仕掛けて、配信データをバンバン売るという効率的なシステムを組み立てることだって可能なのだ。まぁ、そんな不正を行って世間にばれたら、とんでもない事件に発展しそうだけど、必ずしもばれるとは限らないし、実はばれても世間は気にしないのかもしれない(笑)。

 ニュースリリースを見る限り、国内レコード会社のほとんどは、オリコンDDの配信システムに参加する方向で動いているらしい。興味深いのは、ソニーミュージックが参加していない点だけど、これはMoraやAny Musicの存在を考慮する必要がありそう。

 ちなみに、オリコンDDのシステムが採用するファイル形式はWMA。DRMの基本的な考え方は、ダウンロードしたパソコンからの持ち出し不可で、例外としては専用ポータブルプレイヤーに3回まで書き込み可能というもの。これから専用プレイヤーも売り出すみたいだ。ガチガチだねぇ…。

 オリコンみたいな日本の音楽業界に対して非常に大きな影響力を持つ企業が、こういう形で音楽配信ビジネスに参入してくると、いよいよもって音楽配信の未来は、「日本」と「日本以外の世界」という2つに分裂して進んでいく可能性が大きくなってきたように思える。ニュースリリースの最後で、「アジア地域における音楽提供も視野に入れて事業展開」すると謳っているのがなんだか象徴的だ。



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